《ねん》の間《あいだ》わき目《め》もふらずに戦《たたか》いました。
 この戦《いくさ》の間《あいだ》のことでした。ある日《ひ》義家《よしいえ》が何気《なにげ》なく野原《のはら》を通《とお》って行きますと、草《くさ》の深《ふか》く茂《しげ》った中から、出《だ》し抜《ぬ》けにばらばらとがんがたくさん飛《と》び立《た》ちました。義家《よしいえ》はこれを見《み》てしばらく考《かんが》えていましたが、
「野《の》にがんが乱《みだ》れて立《た》ったところをみると、きっと伏兵《ふくへい》があるのだ。それ、こちらから先《さき》へかかれ。」
 といいつけて、そこらの野原《のはら》を狩《か》りたてますと、案《あん》の定《じょう》たくさんの伏兵《ふくへい》が草《くさ》の中にかくれていました。そしてみんなみつかって殺《ころ》されてしまいました。その時《とき》義家《よしいえ》は家来《けらい》たちに向《む》かって、
「がんの乱《みだ》れて立《た》つ時《とき》は伏兵《ふくへい》があるしるしだということは、匡房《まさふさ》の卿《きょう》から教《おそ》わった兵学《へいがく》の本《ほん》にあることだ。お陰《かげ》で危《あ
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