ぶ》ないところを助《たす》かった。だから学問《がくもん》はしなければならないものだ。」
 といいました。
 こんどの戦《いくさ》は前《まえ》の時《とき》に劣《おと》らず随分《ずいぶん》苦《くる》しい戦争《せんそう》でしたけれど、三|年《ねん》めにはすっかり片付《かたづ》いてしまって、義家《よしいえ》はまた久《ひさ》し振《ぶ》りで都《みやこ》へ帰《かえ》ることになりました。ちょうど春《はる》のことで、奥州《おうしゅう》を出て海《うみ》伝《づた》いに常陸《ひたち》の国《くに》へ入《はい》ろうとして、国境《くにざかい》の勿来《なこそ》の関《せき》にかかりますと、みごとな山桜《やまざくら》がいっぱい咲《さ》いて、風《かぜ》も吹《ふ》かないのにはらはらと鎧《よろい》の袖《そで》にちりかかりました。義家《よしいえ》はその時《とき》馬《うま》の上でふり返《かえ》って桜《さくら》の花《はな》を仰《あお》ぎながら、
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「吹《ふ》く風《かぜ》を
なこその関《そき》と
思《おも》えども
道《みち》も狭《せ》に散《ち》る
山桜《やまざくら》かな。」
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 という歌《
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