すと、すぐうしろの松《まつ》の木の枝《えだ》に、ついぞ見《み》たこともないような、美《うつく》しい真《ま》っ白《しろ》な着物《きもの》が掛《か》けてありました。伊香刀美《いかとみ》はふしぎに思《おも》って、そばへ寄《よ》ってみますと、美《うつく》しい着物《きもの》はみんなで八|枚《まい》あって、それは鳥《とり》の翼《つばさ》をひろげたようでもあり、長《なが》い着物《きもの》のすそをひいたようでもありました。それがかすかな風《かぜ》に吹《ふ》かれては、音《おと》を立《た》てたり、香《かお》りを送《おく》ったりしているのです。
伊香刀美《いかとみ》はその着物《きもの》がほしくなりました。
「これはめずらしいものだ。きっとさっきの白い鳥《とり》たちがぬいで行ったものに違《ちが》いない。するとあの八|人《にん》の少女《おとめ》たちは天女《てんにょ》で、これこそ昔《むかし》からいう天《あま》の羽衣《はごろも》というものに違《ちが》いない。」
こう独《ひと》り言《ごと》をつぶやきながら、そっと羽衣《はごろも》を一|枚《まい》取《と》り下《お》ろして、うちへ持《も》って帰《かえ》って、宝《たから
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