白い鳥
楠山正雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)近江国《おうみのくに》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八|羽《わ》
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一
むかし近江国《おうみのくに》の余呉湖《よごのうみ》という湖水《こすい》に近《ちか》い寂《さび》しい村《むら》に、伊香刀美《いかとみ》というりょうしが住《す》んでおりました。
ある晴《は》れた春《はる》の朝《あさ》でした。伊香刀美《いかとみ》はいつものようにりょうの支度《したく》をして、湖水《こすい》の方《ほう》へ下《お》りて行こうとしました。その途中《とちゅう》、山の上にさしかかりますと、今《いま》までからりと晴《は》れ上《あ》がって明《あか》るかった青空《あおぞら》が、ふと曇《くも》って、そこらが薄《うす》ぼんやりしてきました。「おや、雲《くも》が出たのか。」と思《おも》って、あおむいて見《み》ますと、ちょうど伊香刀美《いかとみ》の頭《あたま》の上の空《そら》に、白い雲《くも》のようなものがぽっつり見《み》えて、それがだんだんとひろがって、大きくなって、今《いま》にも頭《あたま》の上に落
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