形《かたち》が見《み》えました。
為朝《ためとも》はだんだんそばへよってみますと、岸《きし》は岩《いわ》がけわしい上に波《なみ》が高《たか》いので、船《ふね》が着《つ》けられません。さんざん回《まわ》りをこぎ回《まわ》りますと、やっと平《たい》らな州《す》のようなところがあって、島《しま》の中から小《ちい》さな川がそこに流《なが》れ出《だ》していました。
為朝《ためとも》はそこから上《あ》がって、ずんずん奥《おく》へ入《はい》って見《み》ますと、一めん、岩《いわ》でたたんだような土地《とち》で、田《た》もなければ畠《はた》もありません。ところどころに見《み》なれない草木《くさき》が生《は》えて、珍《めずら》しい匂《にお》いの花《はな》が咲《さ》いていました。
いくら歩《ある》いても家《いえ》らしいものも見《み》えませんでしたが、そのうちいつどこから出て来《き》たか、一|丈《じょう》も背《せい》の高《たか》さのある大男《おおおとこ》がのそのそと出て来《き》ました。まっくろな体《からだ》に毛《け》がもじゃもじゃ生《は》えて、頭《あたま》の髪《かみ》の毛《け》はまっ赤《か》で、針《はり
前へ
次へ
全31ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング