》を植《う》えたようでした。
 為朝《ためとも》は不思議《ふしぎ》に思《おも》って、
「この島《しま》は何《なん》という島《しま》だ。」
 と大男《おおおとこ》の一人《ひとり》に聞《き》きますと、
「鬼《おに》ガ島《しま》といいます。」
 とこたえました。
 為朝《ためとも》は、いよいよ珍《めずら》しく思《おも》って、
「じゃあお前《まえ》たちは鬼《おに》か。それとも先祖《せんぞ》が鬼《おに》だったのか。」
 とたずねました。
「そうです。わたくしどもは鬼《おに》の子孫《しそん》です。」
「鬼《おに》ガ島《しま》なら、宝《たから》があるだろう。」
「むかしほんとうの鬼《おに》だった時分《じぶん》には、かくれみのだの、かくれがさだの、水の上を浮《う》く靴《くつ》だのというものがあったのですが、今《いま》では半分《はんぶん》人間《にんげん》になってしまって、そういう宝《たから》もいつの間《ま》にかなくなってしまいました。」
「よその島《しま》へ渡《わた》ったことはないか。」
「むかしは船《ふね》がなくっても、ずんずん、よその島《しま》へ行って、人をとったりしたこともありましたが、今《いま》
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