こういって、為朝《ためとも》はここでも王《おう》さまのような威勢《いせい》になりました。
 ある時《とき》為朝《ためとも》は海《うみ》ばたに出て、はるか沖《おき》の方《ほう》をながめていますと、白《しろ》いさぎと青《あお》いさぎが二|羽《わ》つれ立《だ》って海《うみ》の上を飛《と》んで行きます。為朝《ためとも》はそれをながめて、
「わしかなんぞなら知《し》らないが、さぎのような羽《はね》の弱《よわ》いものでは、せいぜい一|里《り》か二|里《り》ぐらいしか飛《と》ぶ力《ちから》はないはずだ。それがああして行くところを見《み》ると、きっとここからそう遠《とお》くないところに島《しま》があるにちがいない。」
 といって、そのまま小船《こぶね》にとび乗《の》って、さぎの飛《と》んで行った方角《ほうがく》に向《む》かってどこまでもこいで行きました。
 その日一|日《にち》こいで、海《うみ》の上で日がくれましたが、島《しま》らしいものは見《み》つかりません。夜《よる》はちょうど月のいいのを幸《さいわ》いに、またどこまでもこいで行きますと、明《あ》け方《がた》になって、やっと島《しま》らしいものの
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