ない。なんとかして助《たす》けてやったらどうか。」
とおっしゃいました。そこで為朝《ためとも》の死罪《しざい》を許《ゆる》して、その代《かわ》り強《つよ》い弓《ゆみ》の引《ひ》けないように、ひじの筋《すじ》を抜《ぬ》いて伊豆《いず》の大島《おおしま》に流《なが》しました。
為朝《ためとも》は筋《すじ》を抜《ぬ》かれて弓《ゆみ》は少《すこ》し弱《よわ》くなりましたが、ひじがのびたので、前《まえ》よりもかえって長《なが》い矢《や》を射《い》ることができるようになりました。
五
為朝《ためとも》は大島《おおしま》へ渡《わた》ると、
「おれは八幡太郎《はちまんたろう》の孫《まご》だ。この島《しま》は天子《てんし》さまから頂《いただ》いたものだ。」
といって、島《しま》を討《う》ち従《したが》えてしまいました。そのうち方々《ほうぼう》にかくれていた為朝《ためとも》の家来《けらい》が、一人《ひとり》二人《ふたり》とだんだん集《あつ》まって来《き》て為朝《ためとも》につきました。
「九州《きゅうしゅう》よりはずっと小《ちい》さいが、また為朝《ためとも》の国《くに》ができた。」
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