ろの門《もん》の七八|寸《すん》もあろうという扉《とびら》をぷすりと射《い》ぬきました。これだけで義朝《よしとも》は胆《きも》を冷《ひや》して、これも外《ほか》の門《もん》へ逃《に》げ出《だ》して行きました。
 こうして為朝《ためとも》一人《ひとり》に射《い》すくめられて、その守《まも》っている門《もん》にはだれも近《ちか》づきませんでしたが、なんといっても向《む》こうは人数《にんずう》が多《おお》い上に、こちらの油断《ゆだん》につけ込《こ》んで夜討《よう》ちをしかけて来《き》たのですから、はじめから元気《げんき》がちがいます。とうとう外《ほか》の門《もん》が一つ一つ片《かた》はしからうち破《やぶ》られ、やがてどっと総《そう》くずれになりました。
 こうなると為朝《ためとも》一人《ひとり》いかに力《りき》んでもどうもなりません。例《れい》の二十八|騎《き》もちりぢりになってしまったので、ただ一人《ひとり》近江《おうみ》の方《ほう》へ落《お》ちて行きました。
 その後《のち》、新院《しんいん》はおとらわれになって、讃岐《さぬき》の国《くに》に流《なが》され、頼長《よりなが》は逃《に》げて
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