ら、どんどん逃《に》げ出《だ》して行きました。
するとこんどはにいさんの義朝《よしとも》が平家《へいけ》の代《か》わりに向《む》かって来《き》ました。にいさんはにいさんだけの威光《いこう》で、いきなりしかりつけて為朝《ためとも》を恐《おそ》れ入《い》らしてやろうと思《おも》ったと見《み》えて、義朝《よしとも》は為朝《ためとも》の顔《かお》の見《み》えるところまで来《き》ますと、大きな声《こえ》で、
「そこにいるのは八郎《はちろう》だな。にいさんに向《む》かって弓《ゆみ》をひくやつがあるか。はやく弓矢《ゆみや》を投《な》げ出《だ》して降参《こうさん》しないか。」
といいました。
すると為朝《ためとも》は笑《わら》って、
「にいさんに弓《ゆみ》をひくのがわるければ、おとうさんに向《む》かって弓《ゆみ》をひくあなたはもっとわるいでしょう。」
とやり込《こ》めました。
これで義朝《よしとも》もへいこうして、だまってしまいました。そしてくやしまぎれに、はげしく味方《みかた》にさしずをして、めちゃめちゃに矢《や》を射《い》かけさせました。
為朝《ためとも》はこの様子《ようす》をこちらか
前へ
次へ
全31ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング