かまつどの》におしよせて、三|方《ぼう》から火をつけて焼《や》き立《た》てた上、向《む》かってくる敵《てき》を一|方《ぽう》に引《ひ》き受《う》けてはげしく攻《せ》め立《た》てることにいたしましょう。そうすると、火に追《お》われて逃《に》げてくるものは矢《や》で射《い》とります。矢《や》をおそれて逃《に》げて行《い》くものは火に焼《や》き立《た》てられて命《いのち》を失《うしな》います。いずれにしても敵《てき》は袋《ふくろ》の中のねずみ同様《どうよう》手も足も出《だ》せるものではございません。それにあちらへお味方《みかた》に上《あ》がった武士《ぶし》の中で、いくらか手ごわいのはわたくしの兄《あに》義朝《よしとも》一人《ひとり》でございますが、これとてもわたくしが矢先《やさき》にかけて打《う》ち倒《たお》してしまいます。まして清盛《きよもり》などが人なみにひょろひょろ矢《や》の一つ二つ射《い》かけましたところで、ついこの鎧《よろい》の袖《そで》ではね返《かえ》してしまうまででございます。まあ、わたくしの考《かんが》えでは、夜《よ》の明《あ》けるまでもございません。まだくらいうちに勝負《し
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