方《ほう》へ歩《ある》いて行きますと、舌《した》を切《き》られたすずめがこんども門《もん》をあけて出てきました。そしてやさしく、
「まあ、おばあさんでしたか。よくいらっしゃいました。」
 と言《い》って、うちの中へ案内《あんない》をしました。そして、
「さあ、どうぞお上《あ》がり下《くだ》さいまし。」
 とおばあさんの手《て》を取《と》っておざしきへ上《あ》げようとしましたが、おばあさんは何《なん》だかせわしそうにきょときょと見《み》まわしてばかりいて、おちついて座《すわ》ろうともしませんでした。
「いいえ、お前《まえ》さんのぶじな顔《かお》を見《み》ればそれで用《よう》はすんだのだから、もうかまっておくれでない。それよりか早《はや》くおみやげをもらって、おいとましましょう。」
 いきなりおみやげのさいそくをされたので、すずめはまあ欲《よく》の深《ふか》いおばあさんだとあきれてしまいましたが、おばあさんはへいきな顔《かお》で、
「さあ、早《はや》くして下《くだ》さいよ。」
 と、じれったそうに言《い》うものですから、
「はい、はい、それではしばらくお待《ま》ち下《くだ》さいまし。今《い
前へ 次へ
全12ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング