》っていれば、たくさんではないか。」
「どうしてたくさんなものですか。よしよし、これから行《い》って、わたしが重《おも》いつづらの方《ほう》ももらってきます。」
 と言《い》って、おじいさんが止《と》めるのも聞《き》かず、あくる日の朝《あさ》になるまで待《ま》たれないで、すぐにうちをとび出《だ》しました。
 もう外《そと》はまっ暗《くら》になっていましたが、おばあさんは欲《よく》ばった一心《いっしん》でむちゃくちゃにつえをつき立《た》てながら、
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「舌切《したき》りすずめ、
お宿《やど》はどこだ、
チュウ、チュウ、チュウ。」
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 と言《い》い言《い》いたずねて行きました。野《の》を越《こ》え、山を越《こ》えて、また野《の》を越《こ》えて、山を越《こ》えて、大きな竹《たけ》やぶのある所《ところ》へ来《き》ますと、やぶの中から、
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「舌切《したき》りすずめ、
お宿《やど》はここよ。
チュウ、チュウ、チュウ。」
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 という声《こえ》がしました。おばあさんは「しめた。」と思《おも》って、声《こえ》のする
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