らって来《き》たのだよ。」
 こう言《い》ってつづらを下《お》ろすと、おばあさんは急《きゅう》ににこにこしながら、
「まあ、それはようございましたねえ。いったい何《なに》が入《はい》っているのでしょう。」
 と言《い》って、さっそくつづらのふたをあけますと、中から目のさめるような金銀《きんぎん》さんごや、宝珠《ほうじゅ》の玉《たま》が出てきました。それを見《み》るとおじいさんは、とくいらしい顔《かお》をして言《い》いました。
「なにね、すずめは重《おも》いつづらと軽《かる》いつづらと二つ出《だ》して、どちらがいいというから、わたしは年《とし》はとっているし、道《みち》も遠《とお》いから、軽《かる》いつづらにしようといってもらってきたのだが、こんなにいいものが入《はい》っていようとは思《おも》わなかった。」
 するとおばあさんは急《きゅう》にまたふくれっ面《つら》をして、
「ばかなおじいさん。なぜ重《おも》い方《ほう》をもらってこなかったのです。その方《ほう》がきっとたくさん、いいものが入《はい》っていたでしょうに。」
「まあ、そう欲《よく》ばるものではないよ。これだけいいものが入《はい
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