はたいそうよろこんで、うちへ帰《かえ》るのも忘《わす》れていました。そのうちにだんだん暗《くら》くなってきたものですから、おじいさんは、
「今日《きょう》はお陰《かげ》で一|日《にち》おもしろかった。日の暮《く》れないうちに、どれ、おいとまとしましょう。」
 と言《い》って、立《た》ちかけました。すずめは、
「まあ、こんなむさくるしいところですけれど、今夜《こんや》はここへとまっていらっしゃいましな。」
 と言《い》って、みんなで引《ひ》きとめました。
「せっかくだが、おばあさんも待《ま》っているだろうから、今日《きょう》は帰《かえ》ることにしましょう。またたびたび来《き》ますよ。」
「それは残念《ざんねん》でございますこと、ではおみやげをさし上《あ》げますから、しばらくお待《ま》ち下《くだ》さいまし。」
 と言《い》って、すずめは奥《おく》からつづらを二つ持《も》ってきました。そして、
「おじいさん、重《おも》いつづらに、軽《かる》いつづらです。どちらでもよろしい方《ほう》をお持《も》ち下《くだ》さい。」
 と言《い》いました。
「どうもごちそうになった上、おみやげまでもらってはすま
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