新羅《しらぎ》の国《くに》の阿具沼《あぐぬま》という沼《ぬま》のそばで、ある日|一人《ひとり》の女が昼寝《ひるね》をしておりました。するとふしぎにも日の光《ひかり》が虹《にじ》のようになって、寝《ね》ている女の体《からだ》にさし込《こ》みました。
 すると間《ま》もなく女は身持《みも》ちになって、やがて赤《あか》い玉《たま》を一つ生《う》み落《お》としました。ちょうど女の寝《ね》ていた時《とき》、そばを通《とお》りかかって様子《ようす》を見《み》ていた一人《ひとり》の百姓《ひゃくしょう》が、はじめからふしぎに思《おも》って、どうなるかと気《き》をつけていましたが、女が赤《あか》い玉《たま》を生《う》んだのを見《み》て、それをもらって帰《かえ》りました。
 この百姓《ひゃくしょう》は谷《たに》の間《あいだ》に田を作《つく》っていました。ある日そこで働《はたら》いている男たちの食《た》べ物《もの》を牛《うし》に背負《せお》わせて運《はこ》んで行きますと、ふと王子《おうじ》の天日矛《あまのひぼこ》に途中《とちゅう》で出会《であ》いました。王子《おうじ》は百姓《ひゃくしょう》が人通《ひと
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