》しかったろう。べつに変《か》わったことはなかったか。」
といいいい奥《おく》へ通《とお》りました。
おとうさんはやっと座《すわ》って、お茶《ちゃ》を一|杯《ぱい》のむ暇《ひま》もないうちに、包《つつ》みの中から細長《ほそなが》い箱《はこ》を出《だ》して、にこにこしながら、
「さあ、お約束《やくそく》のおみやげだよ。」
といって、娘《むすめ》に渡《わた》しました。娘《むすめ》は急《きゅう》にとろけそうな顔《かお》になって、
「おとうさん、ありがとう。」
といいながら、箱《はこ》をあけますと、中からかわいらしいお人形《にんぎょう》さんやおもちゃが、たんと出てきました。娘《むすめ》はだいじそうにそれを抱《かか》えて、
「うれしい、うれしい。」
といって、はね回《まわ》っていました。するとおとうさんは、また一つ平《ひら》たい箱《はこ》を出《だ》して、
「これはお前《まえ》のおみやげだ。」
といって、おかあさんに渡《わた》しました。おかあさんも、
「おや、それはどうも。」
といいながら、開《あ》けてみますと、中には金《かね》でこしらえた、まるい平《ひら》たいものが入《はい》ってい
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