なるか知《し》れないから、今《いま》のうちにおへやのおそうじをして、そこらをきれいにしておきましょう。」
こういって散《ち》らかったおへやの中を片《かた》づけはじめますと、娘《むすめ》も小さなほうきを持《も》って、お庭《にわ》をはいたりしました。
するとその日の夕方《ゆうがた》、おとうさんは荷物《にもつ》をしょって、
「ああ、疲《つか》れた、疲《つか》れた。」
といいながら、帰《かえ》って来《き》ました。その声《こえ》を聞《き》くと、娘《むすめ》はあわててとび出《だ》して来《き》て、
「おとうさん、お帰《かえ》りなさい。」
といいました。おかあさんもうれしそうに、
「まあ、お早《はや》いお帰《かえ》りでしたね。」
といいながら、背中《せなか》の荷物《にもつ》を手伝《てつだ》って下《お》ろしました。娘《むすめ》はきっとこの中にいいおみやげが入《はい》っているのだろうと思《おも》って、にこにこしながら、おかあさんのお手伝《てつだ》いをして、荷物《にもつ》を奥《おく》まで運《はこ》んで行きました。そのあとから、おとうさんは脚絆《きゃはん》のほこりをはたきながら、
「ずいぶん寂《さび
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