《うまきち》がこわごわはい出《だ》して、二|階《かい》からそっとのぞいてみますと、折《おり》からさし込《こ》む月《つき》の光《ひかり》で、さっきの山姥《やまうば》が、台所《だいところ》のお釜《かま》の前《まえ》に座《すわ》って、独《ひと》り言《ごと》をいっているのが見《み》えました。
「今日《きょう》は久《ひさ》し振《ぶ》りでごちそうだったなあ。大根《だいこん》もうまかった。馬《うま》もうまかった。あれでうっかりしていて、馬吉《うまきち》に逃《に》げられなければ、なおよかったのだけれど、残念《ざんねん》なことをした。」
馬吉《うまきち》はそれを聞《き》くと、ぶるぶるふるえ上《あ》がって、頭《あたま》をおさえてちぢこまってしまいました。
しばらくすると、山姥《やまうば》は大きな口をあいて、大あくびをして、
「ああ、くたびれた。眠《ねむ》くなった。今夜《こんや》はどこに寝《ね》ようかな、臼《うす》の中にしようか。釜《かま》の中にしようか。下に寝《ね》ようか。二|階《かい》に寝《ね》ようか。そうだ、涼《すず》しいから二|階《かい》に寝《ね》よう。」
といいました。
馬吉《うまきち》は
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