おばあさんはずんずんそばへ寄《よ》って来《き》て、
「馬吉《うまきち》、馬吉《うまきち》。大根《だいこん》をおくれ。」
といいました。馬吉《うまきち》がだまって大根《だいこん》を一|本《ぽん》抜《ぬ》いて渡《わた》しますと、おばあさんは耳《みみ》まで裂《さ》けているかと思《おも》うような大きな、真《ま》っ赤《か》な口《くち》をあいて、大根《だいこん》をもりもり食《た》べはじめました。もりもりかむたんびに、赤《あか》い髪《かみ》の毛《け》が、一|本《ぽん》一|本《ぽん》逆立《さかだ》ちをしました。
いうまでもなく、それは山姥《やまうば》でした。
山姥《やまうば》は見《み》る見《み》る一|本《ぽん》の大根《だいこん》を食《た》べてしまって、また「もう一|本《ぽん》。」と手を出《だ》しました。それから二|本《ほん》、三|本《ぼん》、四|本《ほん》と、もらっては食《た》べ、もらっては食《た》べ、とうとう馬《うま》の背中《せなか》にのせた百|本《ぽん》あまりの大根《だいこん》を、残《のこ》らず食《た》べてしまうと、もうとっぷり日が暮《く》れてしまいました。
ありったけの大根《だいこん》を
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