うば》が追《お》っかけて来《く》るから助《たす》けて下《くだ》さい。」
 と、女の子はいいました。おじいさんは、
「よし、よし。」
 といって、背中《せなか》のしばを下《お》ろして、その中に女の子をかくしました。
 すると山姥《やまうば》が追《お》っかけて来《き》て、おじいさんに、女の子はどこへ行ったとたずねました。おじいさんがわざと、「あそこに。」といって、向《む》こうに積《つ》んであるしばを指《ゆび》さしますと、山姥《やまうば》はいきなりそのしばに抱《だ》きつきました。するとそのしばはちょうど崖《がけ》の上に立《た》てかけてあったものですから、山姥《やまうば》は自分《じぶん》のからだの重《おも》みで、しばを抱《かか》えたまま、ころころと谷《たに》そこへころげ落《お》ちました。そのひまに女の子はどんどん逃《に》げて行きました。すると山姥《やまうば》はまた谷《たに》そこからはい上《あ》がって、「おう、おう。」といいながら、あとから追《お》っかけて行きました。
 女の子がまた一生懸命《いっしょうけんめい》逃《に》げますと、また一人《ひとり》のおじいさんが、そこでかやを刈《か》っていました
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