飯《ごはん》のいっぱい入《はい》ったおはちを持《も》って来《き》ました。山姥《やまうば》はおはちのふたをあけて、手づかみでせっせと御飯《ごはん》をつめこみながら、たくあんをまるごと、もりもりかじっていました。その間《あいだ》に女の子は、そっとうちから抜《ぬ》け出《だ》して、逃《に》げて行きました。
 どんどん逃《に》げて行って、山《やま》の下まで来《く》ると、御飯《ごはん》を食《た》べてしまった山姥《やまうば》が、いくらさがしても女の子がいないので、大《たい》そうおこって、
「おう、おう。」
 といいながら追《お》っかけて来《き》ました。ずいぶん一生懸命《いっしょうけんめい》駆《か》けたのですけれど、山姥《やまうば》の足《あし》に小《ちい》さな女の子がかなうはずはありませんから、ずんずん追《お》いつかれて、もう一足《ひとあし》で山姥《やまうば》に肩《かた》をつかまれそうになりました。女の子は夢中《むちゅう》で一生懸命《いっしょうけんめい》逃《に》げますと、山の上からしばを背中《せなか》にしょって下《お》りて来《く》るおじいさんに出《で》あいました。
「おじいさん、おじいさん。山姥《やま
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