いいました。
「わたしだよ。すぐにあけておくれ。」
 と、おばあさんらしい声《こえ》が聞《き》こえました。
「でもあけてはいけないんだって、おとうさんとおかあさんがそういったから。」
 と、女の子はいいました。
「何《なん》だって。よしよし、あけてくれなければ、この戸《と》をけ破《やぶ》ってやる。」
 こういっていきなり戸《と》に手をかけて、みりみり動《うご》かしながら、両足《りょうあし》でどんどん、どんどん、けつけました。女の子はびっくりして、困《こま》って、しかたがないものですから、戸《と》をあけてやりました。
 戸《と》をあけると、ぬっと、おそろしい顔《かお》をした山姥《やまうば》が入《はい》って来《き》て、炉《ろ》ばたに足《あし》をなげ出《だ》して、
「おお、寒《さむ》い、寒《さむ》い。」
 といいました。
「おばあさん、何《なに》しに来《き》たの。」
 と、女の子はたずねました。
「おなかがすいた。早《はや》く御飯《ごはん》の支度《したく》をしろ。」
 と、山姥《やまうば》はこわい顔《かお》をしていいつけました。
 女の子はぶるぶるふるえながら、台所《だいどころ》へ行って、御
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