「おじいさん、おじいさん。山姥《やまうば》が来《く》るから助《たす》けて下《くだ》さい。」
 と、女の子がいいますと、おじいさんは「よし、よし。」と、刈《か》ってあるかやの中に隠《かく》してくれました。
 やがて山姥《やまうば》が追《お》っかけて来《き》ますと、おじいさんはわざと向《む》こうの崖《がけ》の上にあるかやのたばを指《ゆび》さしました。山姥《やまうば》がいきなりかやのたばに武者振《むしゃぶ》りつきますと、はずみですべって、ころころと谷《たに》そこにころがりました。その間《ま》に女の子は、またどんどん逃《に》げて行きました。

       二

 そのうちとうとう大きな沼《ぬま》のふちに出ました。やがて山姥《やまうば》も谷《たに》そこからはい上《あ》がって、また追《お》っかけて来《き》ました。女の子はもうこの先《さき》逃《に》げて行くことができなくなって、沼《ぬま》のふちに立《た》っている大きな樫《かし》の木の上に登《のぼ》りました。すると山姥《やまうば》が追《お》っついて来《き》て、
「どこへ行った、どこへ行った。どこまで逃《に》げたって逃《に》がすものか。」
 といい
前へ 次へ
全19ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング