りをして、
「もう一|本《ぽん》で千|本《ぼん》になります。どうぞ一ばんいい刀《かたな》をお授《さず》け下《くだ》さい。」
といって、それからいつものように、五条《ごじょう》の橋《はし》の下へ行って立《た》っていました。
三
牛若《うしわか》は五条《ごじょう》の橋《はし》の大《おお》どろぼうのうわさを聞《き》くと、
「ふん、それはおもしろい。てんぐでも鬼《おに》でも、そいつを負《ま》かして家来《けらい》にしてやろう。」
と思《おも》いました。
月のいい夏《なつ》の晩《ばん》でした。牛若《うしわか》は腹巻《はらまき》をして、その上に白《しろ》い直垂《ひたたれ》を着《き》ました。そして黄金《こがね》づくりの刀《かたな》をはいて、笛《ふえ》を吹《ふ》きながら、五条《ごじょう》の橋《はし》の方《ほう》へ歩《ある》いて行きました。
橋《はし》の下に立《た》っていた弁慶《べんけい》は、遠《とお》くの方《ほう》から笛《ふえ》の音《ね》が聞《き》こえて来《く》ると、
「来《き》たな。」
と思《おも》って、待《ま》っていました。そのうち笛《ふえ》の音《ね》はだんだん近《ちか》く
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