なって、色《いろ》の白《しろ》い、きれいな稚児《ちご》が歩《ある》いて来《き》ました。弁慶《べんけい》は、
「なんだ、子供《こども》か。」
 とがっかりしましたが、そのはいている太刀《たち》に気《き》がつくと、
「おや、これは、」
 と思《おも》いました。
 弁慶《べんけい》は橋《はし》のまん中に飛《と》び出《だ》して行って、牛若《うしわか》の行く道《みち》に立《た》ちはだかりました。牛若《うしわか》は笛《ふえ》を吹《ふ》きやめて、
「じゃまだ。どかないか。」
 といいました。弁慶《べんけい》は笑《わら》って、
「その太刀《たち》をわたせ。どいてやろう。」
 といいました。牛若《うしわか》は心《こころ》の中で、
「こいつが太刀《たち》どろぼうだな。よしよし、ひとつからかってやれ。」
 と思《おも》いました。
「ほしけりゃ、やってもいいが、ただではやられないよ。」
 牛若《うしわか》はこういって、きっと弁慶《べんけい》の顔《かお》を見《み》つめました。
 弁慶《べんけい》はいら立《だ》って、
「どうしたらよこす。」
 とこわい顔《かお》をしました。
「力《ちから》ずくでとってみろ。」
 
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