と牛若《うしわか》がいいました。弁慶《べんけい》はまっ赤《か》になって、
「なんだと。」
といいながら、いきなりなぎなたで横《よこ》なぐりに切《き》りつけました。すると牛若《うしわか》はとうに二三|間《げん》後《あと》に飛《と》びのいていました。弁慶《べんけい》は少《すこ》しおどろいて、また切《き》ってかかりました。牛若《うしわか》はひょいと橋《はし》の欄干《らんかん》にとび上《あ》がって、腰《こし》にさした扇《おうぎ》をとって、弁慶《べんけい》の眉間《みけん》をめがけて打《う》ちつけました。ふいを打《う》たれて弁慶《べんけい》は面《めん》くらったはずみに、なぎなたを欄干《らんかん》に突《つ》き立《た》てました。牛若《うしわか》はその間《ま》にすばやく弁慶《べんけい》の後《うし》ろに下《お》りてしまいました。そして弁慶《べんけい》がなぎなたを抜《ぬ》こうとあせっている間《ま》に、後《うし》ろからどんとひどくつきとばしました。弁慶《べんけい》はそのままとんとんと五六|間《けん》飛《と》んで行って、前《まえ》へのめりました。牛若《うしわか》はすぐとその上に馬乗《うまの》りに乗《の》って、
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