「どうだ、まいったか。」
 といいました。
 弁慶《べんけい》はくやしがって、はね起《お》きようとしましたが、重《おも》い石《いし》で押《おさ》えられたようにちっとも動《うご》かれないので、うんうんうなっていました。牛若《うしわか》は背中《せなか》の上で、
「どうだ、降参《こうさん》しておれの家来《けらい》になるか。」
 といいました。弁慶《べんけい》は閉口《へいこう》して、
「はい、降参《こうさん》します。御家来《ごけらい》になります。」
 と答《こた》えました。
「よしよし。」
 と牛若《うしわか》はいって、弁慶《べんけい》をおこしてやりました。弁慶《べんけい》は両手《りょうて》を地《ち》について、
「わたくしはこれまでずいぶん強《つよ》いつもりでいましたが、あなたにはかないません。あなたはいったいどなたです。」
 といいました。牛若《うしわか》はいばって、
「おれは牛若《うしわか》だ。」
 といいました。
 弁慶《べんけい》はおどろいて、
「じゃあ、源氏《げんじ》の若君《わかぎみ》ですね。」
 といいました。
「うん、佐馬頭義朝《さまのかみよしとも》の末子《ばっし》だ。お前《ま
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