え》はだれだ。」
「どうりでただの人ではないと思《おも》いました。わたしは武蔵坊弁慶《むさしぼうべんけい》というものです。あなたのようなりっぱな御主人《ごしゅじん》を持《も》てば、わたしも本望《ほんもう》です。」
 といいました。
 これで牛若《うしわか》と弁慶《べんけい》は、主従《しゅじゅう》のかたい約束《やくそく》をいたしました。

     四

 牛若《うしわか》は間《ま》もなく元服《げんぷく》して、九郎義経《くろうよしつね》と名《な》のりました。そしてにいさんの頼朝《よりとも》をたすけて、平家《へいけ》をほろぼしました。
 弁慶《べんけい》は義経《よしつね》といっしょに度々《たびたび》戦《いくさ》に出て手柄《てがら》をあらわしました。後《のち》に義経《よしつね》が頼朝《よりとも》と仲《なか》が悪《わる》くなって、奥州《おうしゅう》へ下《くだ》った時《とき》も、しじゅう義経《よしつね》のお供《とも》をして忠義《ちゅうぎ》をつくしました。そしておしまいに奥州《おうしゅう》の衣川《ころもがわ》というところで、義経《よしつね》のために討《う》ち死《じ》にをしました。その時《とき》体《
前へ 次へ
全15ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング