し》のたもとに立《た》っていました。そしてよさそうな刀《かたな》をさした人が来《く》ると、だしぬけにとび出《だ》して行って奪《うば》いとります。逃《に》げようとしたり、すなおに渡《わた》さなかったりするものは、なぎなたでなぎ倒《たお》しました。
 すると、このごろは毎晩《まいばん》五条《ごじょう》の橋《はし》に大坊主《おおぼうず》が出て、人の刀《かたな》をとるという評判《ひょうばん》がぱっと高《たか》くなりました。
 坊主《ぼうず》ではない、てんぐだというものもありました。そしてみんなこわがって、日が暮《く》れると五条《ごじょう》の橋《はし》をとおる者《もの》がなくなりました。
 ある時《とき》弁慶《べんけい》がとって来《き》た刀《かたな》を出《だ》して数《かぞ》えてみますと、ちょうど九百九十九|本《ほん》ありました。弁慶《べんけい》はよろこんで、
「うまい、うまい、もう一|本《ぽん》で千|本《ぼん》だぞ。おしまいに一ばんいい刀《かたな》を取《と》ってやりたいものだ。」
 と独《ひと》り言《ごと》をいいました。そしてその晩《ばん》はわざわざ五条《ごじょう》の天神《てんじん》さまにおまい
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