しわか》はもう十四、五になっていました。

     二

 そのころ京都《きょうと》の北《きた》の比叡山《ひえいざん》に、弁慶《べんけい》という強《つよ》い坊《ぼう》さんがありました。この弁慶《べんけい》は生《う》まれる前《まえ》おかあさんのおなかに十八|箇月《かげつ》もいたので、生《う》まれるともう三つぐらいの子供《こども》の大きさがあって、髪《かみ》の毛《け》がもじゃもじゃ生《は》えて、大きな歯《は》がにょきんと出ていました。そしてずんずん口をききました。
「ああ、明《あか》るい。」
 はじめておかあさんのおなかからとび出《だ》したとき、こういっていきなりちょこちょこと歩《ある》き出《だ》したそうです。おとうさんは気味《きみ》をわるがって、大きくなるとすぐ、お寺《てら》へやってしまいました。お寺《てら》へやられても、生《う》まれつきたいそう気《き》のあらい上に、この上なく力《ちから》が強《つよ》いので、すこし気《き》にくわないことがあると、ほかの坊《ぼう》さんをぶちました。ぶたれて死《し》んだ坊《ぼう》さんもありました。みんなは弁慶《べんけい》というと、ふるえ上《あ》がってこわが
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