寺《てら》へやられました。
 そのうち牛若《うしわか》はだんだん物《もの》がわかって来《き》ました。おとうさんが平家《へいけ》のために滅《ほろ》ぼされたことを人から聞《き》いて、くやしがって泣《な》きました。
「毎日《まいにち》お経《きょう》なんかよんで、坊《ぼう》さんになってもしかたがない。おれは剣術《けんじゅつ》をけいこして、えらい大将《たいしょう》になるのだ。そして平家《へいけ》を滅《ほろ》ぼして、おとうさまのかたきを討《う》つのだ。」
 こう牛若《うしわか》は思《おも》って、急《きゅう》に剣術《けんじゅつ》が習《なら》いたくなりました。
 鞍馬山《くらまやま》のおくに僧正《そうじょう》ガ谷《たに》という谷があります。松《まつ》や杉《すぎ》が茂《しげ》っていて、昼《ひる》も日の光《ひかり》がささないような所《ところ》でした。牛若《うしわか》は一人《ひとり》で剣術《けんじゅつ》をやってみようと思《おも》って、毎晩《まいばん》人が寝《ね》しずまってから、お寺《てら》をぬけ出《だ》して僧正《そうじょう》ガ谷《たに》へ行きました。そしてそこにたくさん並《なら》んでいる杉《すぎ》の木を平家
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