見《み》るひまもなく、すぐ目《め》の前《まえ》に一人《ひとり》、りっぱな馬《うま》に乗《の》った大将《たいしょう》らしい侍《さむらい》を先《さき》に立《た》てて、こんどは何《なん》百|人《にん》という侍《さむらい》が、一塊《ひとかたまり》になって寄《よ》せて来《き》て、保名主従《やすなしゅじゅう》を取《と》り囲《かこ》みました。そこで又《また》はげしい戦《いくさ》がはじまりました。保名主従《やすなしゅじゅう》は幾《いく》ら強《つよ》くっても、先刻《せんこく》の働《はたら》きでずいぶん疲《つか》れている上に、百|倍《ばい》もある敵《てき》に囲《かこ》まれていることですから、とても敵《かな》いようがありません。保名《やすな》の家来《けらい》は残《のこ》らず討《う》たれて、保名《やすな》も体中《からだじゅう》刀傷《かたなきず》や矢傷《やきず》を負《お》った上に、大ぜいに手足《てあし》をつかまえられて、虜《とりこ》にされてしまいました。
この馬《うま》に乗《の》った大将《たいしょう》は、やはりお隣《となり》の河内国《かわちのくに》に住《す》んでいる石川悪右衛門《いしかわあくうえもん》という侍
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