いいました。それから二言《ふたこと》三言《みこと》いい合《あ》ったと思《おも》うと、乱暴《らんぼう》な侍共《さむらいども》はいきなり刀《かたな》を抜《ぬ》いて切《き》ってかかりました。保名《やすな》も家来《けらい》たちもみんな強《つよ》い侍《さむらい》でしたから、負《ま》けずに防《ふせ》ぎ戦《たたか》って、とうとう乱暴《らんぼう》な侍共《さむらいども》を残《のこ》らず追《お》い払《はら》ってしまいました。そして箱《はこ》の中にかくしておいた狐《きつね》をさっそく出《だ》して、その間《ま》に逃《に》がしてやりました。狐《きつね》はまるで人間《にんげん》が手を合《あ》わせて拝《おが》むような形《かたち》をして、二三|度《ど》拝《おが》んだと思《おも》うと、さもうれしそうにしっぽを振《ふ》って、草叢《くさむら》の中へ逃《に》げて行ってしまいました。
狐《きつね》の姿《すがた》が見《み》えなくなったと思《おも》うと、また向《む》こうの森《もり》の中で、先《せん》よりも三|倍《ばい》も四|倍《ばい》もさわがしい人声《ひとごえ》がしました。保名《やすな》が驚《おどろ》いて振《ふ》り返《かえ》って
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