むらい》でしたから、かわいそうに思《おも》って、家来《けらい》にかつがせた箱《はこ》の中に狐《きつね》を入《い》れて、かくまってやりました。すると間《ま》もなく、「うおっうおっ。」というやかましい鬨《とき》の声《こえ》を上《あ》げて、何《なん》十|人《にん》とない侍《さむらい》が、森《もり》の中から駆《か》け出《だ》して来《き》ました。そしていきなり保名《やすな》の幕《まく》の中にばらばらと飛《と》び込《こ》んで来《き》て、物《もの》もいわずにそこらを探《さが》し回《まわ》りました。
この乱暴《らんぼう》なしわざを見《み》て、保名《やすな》はかっと腹《はら》を立《た》てて、
「あなたはだれです。断《ことわ》りもなく、出《だ》し抜《ぬ》けに人の幕《まく》の中に入《はい》って来《く》るのは、乱暴《らんぼう》ではありませんか。」
ととがめました。
「生意気《なまいき》をいうな。我々《われわれ》がせっかく見《み》つけた狐《きつね》が、この幕《まく》の中に逃《に》げ込《こ》んだから探《さが》すのだ。早《はや》く狐《きつね》を出《だ》せ。」
とその中の頭分《かしらぶん》らしい侍《さむらい》が
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