のふたをあけると、なるほど赤《あか》と白の猫《ねこ》が二|匹《ひき》飛《と》び出《だ》しました。天子《てんし》さまも役人《やくにん》たちも舌《した》をまいて驚《おどろ》きました。
 今《いま》のは勝負《しょうぶ》なしにすんだので、又《また》、四五|人《にん》のお役人《やくにん》が、大きなお三方《さんぽう》に何《なに》か載《の》せて、その上に厚《あつ》い布《ぬの》をかけて運《はこ》んで来《き》ました。道満《どうまん》はそれを見《み》ると、こんどこそ晴明《せいめい》に先《せん》をこされまいというので、いきり立《た》って、
「ではわたくしから申《もう》し上《あ》げます。お三方《さんぽう》の上にお載《の》せになったのは、みかん十五です。」
 といいました。
 晴明《せいめい》はそれを聞《き》いて、「ふん。」と心《こころ》の中であざ笑《わら》いました。そして少《すこ》しいたずらをして、高慢《こうまん》らしい道満《どうまん》の鼻《はな》をあかせてやりたいと思《おも》いました。そこでそっと物《もの》を換《か》える術《じゅつ》を使《つか》って、お三方《さんぽう》の中の品物《しなもの》を素早《すばや》く
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