ち》を担《かつ》いで来《き》て、そこへすえました。
「道満《どうまん》、晴明《せいめい》、この長持《ながもち》の中には何《なに》が入《はい》っているか、当《あ》ててみよ、という陛下《へいか》の仰《おお》せです。」
 とお役人《やくにん》の頭《かしら》がいいました。
 すると道満《どうまん》は、さもとくいらしい顔《かお》をして、
「晴明《せいめい》、まずお前《まえ》からいうがいい。子供《こども》のことだ、先《さき》を譲《ゆず》ってやる。」
 といいました。晴明《せいめい》はその時《とき》、丁寧《ていねい》に頭《あたま》を下《さ》げて、
「では失礼《しつれい》ですが、わたくしから申《もう》し上《あ》げましょう。長持《ながもち》の中にお入《い》れになったのは猫《ねこ》二|匹《ひき》です。」
 といいました。
 晴明《せいめい》がうまくいいあてたので、道満《どうまん》はぎょっとしました。
「ふん、まぐれ当《あ》たりに当《あ》たったな。いかにも二|匹《ひき》の猫《ねこ》に相違《そうい》ありません。それで一|匹《ぴき》は赤猫《あかねこ》、一|匹《ぴき》は白猫《しろねこ》です。」
 長持《ながもち》
前へ 次へ
全37ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング