位《くらい》を取《と》り上《あ》げて、追《お》い返《かえ》して頂《いただ》きとうございます。」
 と申《もう》し上《あ》げました。
「でもお前《まえ》がもし童子《どうじ》に負《ま》けたらどうするか。」
 と天子《てんし》さまは少《すこ》しおこって、おたずねになりました。
「はい、万々一《まんまんいち》わたくしが負《ま》けるようなことがございましたら、それこそわたくしの頂《いただ》いておりますお役《やく》も位《くらい》も残《のこ》らずお返《かえ》し申《もう》し上《あ》げて、わたくしは童子《どうじ》の弟子《でし》になって、修業《しゅぎょう》をいたします。」
 と、高慢《こうまん》な顔《かお》をしてお答《こた》え申《もう》し上《あ》げました。
 そこで天子《てんし》さまは阿倍《あべ》の晴明親子《せいめいおやこ》をお呼《よ》び出《だ》しになり、御前《ごぜん》で術《じゅつ》比《くら》べさせてごらんになることになりました。道満《どうまん》と晴明《せいめい》が右左《みぎひだり》に別《わか》れて席《せき》につきますと、やがて役人《やくにん》が四五|人《にん》かかって、重《おも》そうに大きな長持《ながも
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