換《か》えてしまいました。そしてすました顔《かお》をしながら、
「これはみかん十五ではございません。ねずみ十五|匹《ひき》をお入《い》れになったと存《ぞん》じます。」
 といいました。天子《てんし》さまはじめお役人《やくにん》たちはびっくりしました。こんどこそは晴明《せいめい》がしくじったと思《おも》いました。そばについていたおとうさんの保名《やすな》も真《ま》っ青《さお》になって、息子《むすこ》のそでを引《ひ》きました。けれども晴明《せいめい》はあくまで平気《へいき》な顔《かお》をしていました。道満《どうまん》は真《ま》っ赤《か》になって、
「さあ、詐欺師《さぎし》の証拠《しょうこ》は現《あらわ》れましたぞ。中を早《はや》くおあけなさい、早《はや》く。」
 とさけびました。
 お役人《やくにん》はお三方《さんぽう》の覆《おお》いをとりました。するとどうでしょう。お三方《さんぽう》の上に載《の》せたのはみかんではなくって、今《いま》の今《いま》まで晴明《せいめい》のほかだれ一人《ひとり》思《おも》いもかけなかったねずみが十五|匹《ひき》、ちょろちょろ飛《と》び出《だ》して、御殿《ごてん
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