のからすは、関東《かんとう》のからすと顔《かお》を見合《みあ》わせて、あざけるように、かあかあと笑《わら》いました。そしてまた関東《かんとう》のからすは東《ひがし》へ、京都《きょうと》のからすは西《にし》へ、別《わか》れて飛《と》んでいってしまいました。
 からすの言葉《ことば》を聞《き》いて、童子《どうじ》は早速《さっそく》占《うらな》いを立《た》ててみると、なるほどからすのいったとおりに違《ちが》いありませんでしたから、おとうさんの前《まえ》へ出て、その話《はなし》をして、
「どうか、わたしを京都《きょうと》へ連《つ》れて行って下《くだ》さい。天子《てんし》さまの御病気《ごびょうき》を治《なお》して上《あ》げとうございます。」
 といいました。
 保名《やすな》もこれをしおに京都《きょうと》へ行《い》って、阿倍《あべ》の家《いえ》を興《おこ》す時《とき》が来《き》たと、大《たい》そうよろこんで、童子《どうじ》を連《つ》れて京都《きょうと》へ上《のぼ》りました。そして天子《てんし》さまの御所《ごしょ》に上《あ》がって、お願《ねが》いの筋《すじ》を申《もう》し上《あ》げました。天子《て
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