「じゃあどういうわけなんだね。」
 と関東《かんとう》のからすはたずねました。
「それはこういうわけさ。このごろ御所《ごしょ》の建《た》て替《か》えをやって、天子《てんし》さまのお休《やす》みになる御殿《ごてん》の柱《はしら》を立《た》てた時《とき》に、大工《だいく》がそそっかしく、東北《うしとら》の隅《すみ》の柱《はしら》の下に蛇《へび》と蛙《かえる》を生《い》き埋《う》めにしてしまったのだ。それが土台石《どだいいし》の下で、今《いま》だに生《い》きていて、夜《よる》も昼《ひる》もにらみ合《あ》って戦《たたか》っている。蛇《へび》と蛙《かえる》がおこって吹《ふ》き出《だ》す息《いき》が炎《ほのお》になって、空《そら》まで立《た》ちのぼると、こんどは天《てん》が乱《みだ》れる。その勢《いきお》いで天子《てんし》さまの体《からだ》にお病《やまい》がおこるのだ。だからあの蛇《へび》と蛙《かえる》を追《お》い出《だ》してしまわないうちは、御病気《ごびょうき》は治《なお》りっこないのだよ。」
「ふん、それじゃあ人間《にんげん》になんか分《わ》からないはずだなあ。」
 そこで京都《きょうと》
前へ 次へ
全37ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング