《にわ》の柿《かき》の木に、からすが二|羽《わ》、かあかあいって飛《と》んで来《き》ました。そして何《なに》かがちゃがちゃおしゃべりをはじめました。何《なに》をからすはいっているのか知《し》らんと思《おも》って、童子《どうじ》は例《れい》のふしぎな玉《たま》を耳《みみ》に当《あ》てますと、このからすは東《ひがし》の方《ほう》から来《き》た関東《かんとう》のからすと、西《にし》の方《ほう》から来《き》た京都《きょうと》のからすでした。京都《きょうと》のからすは関東《かんとう》のからすに向《む》かって、このごろ都《みやこ》で見《み》て来《き》た話《はなし》をしました。
「都《みやこ》の御所《ごしょ》では、天子《てんし》さまが大病《たいびょう》で、大《たい》そうなさわぎをしているよ。お医者《いしゃ》というお医者《いしゃ》、行者《ぎょうじゃ》という行者《ぎょうじゃ》を集《あつ》めて、いろいろ手をつくして療治《りょうじ》をしたり、祈祷《きとう》をしたりしているが、一向《いっこう》にしるしが見《み》えない。それはそのはずさ、あれは病気《びょうき》ではないんだからなあ。だがわたしは知《し》っている。
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