いました。保名《やすな》は子供《こども》を連《つ》れて畑《はたけ》から帰《かえ》って来《き》ました。母親《ははおや》の変《か》わった姿《すがた》を見《み》てびっくりした子供《こども》は、泣《な》きながら方々《ほうぼう》父親《ちちおや》のいる所《ところ》を探《さが》し歩《ある》いて、やっと見《み》つけると、今《いま》し方《がた》見《み》たふしぎを父親《ちちおや》に話《はな》したのです。保名《やすな》は驚《おどろ》いて、子供《こども》を連《つ》れて、あわてて帰《かえ》って来《き》てみると、とんからりこ、とんからりこ、いつもの機《はた》の音《おと》が聞《き》こえないで、うちの中はひっそりと、静《しず》まり返《かえ》っていました。うち中《じゅう》たずね回《まわ》っても、裏《うら》から表《おもて》へと探《さが》し回《まわ》っても、もうどこにも葛《くず》の葉《は》の姿《すがた》は見《み》えませんでした。そしてもう暮《く》れ方《がた》の薄明《うすあか》りの中に、くっきり白く浮《う》き出《だ》している障子《しょうじ》の上に、よく見《み》ると、字《じ》が書《か》いてありました。
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