瓜子姫子《うりこひめこ》に向《む》かって、
「この山の上には、あまんじゃくというわるものが住《す》んでいる。留守《るす》にお前《まえ》をとりに来《く》るかも知《し》れないから、けっして戸《と》をあけてはいけないよ。」
 といって、しっかり戸《と》をしめて出て行きました。

     二

 するとある日のこと、瓜子姫子《うりこひめこ》が一人《ひとり》で、とんからりこ、とんからりこ、ぎいぎいばったん、機《はた》を織《お》っておりますと、とうとうあまんじゃくがやって来《き》ました。そしてやさしい猫《ねこ》なで声《ごえ》をつくって、
「もしもし、瓜子姫子《うりこひめこ》、この戸《と》をあけておくれな。二人《ふたり》で仲《なか》よく遊《あそ》ぼうよ。」
 といいました。
「いいえ、あけられません。」
 と、瓜子姫子《うりこひめこ》はいいました。
「瓜子姫子《うりこひめこ》、少《すこ》しでいいからあけておくれ、指《ゆび》の入《はい》るだけあけておくれ。」
「そんなら、それだけあけましょう。」
「もう少《すこ》しあけておくれ、瓜子姫子《うりこひめこ》。せめてこの手が入《はい》るだけ。」
「そんなら
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