、それだけあけましょう。」
「瓜子姫子《うりこひめこ》、もう少《すこ》しだ。あけておくれ。せめて頭《あたま》の入《はい》るだけ。」
しかたがないので、瓜子姫子《うりこひめこ》は頭《あたま》の入《はい》るだけあけてやりますと、あまんじゃくはするするとうちの中へ入《はい》って来《き》ました。
「瓜子姫子《うりこひめこ》、裏《うら》の山へ柿《かき》を取《と》りに行《い》こうか。」
と、あまんじゃくがいいました。
「柿《かき》を取《と》りに行《い》くのはいや。おじいさんにしかられるから。」
と、瓜子姫子《うりこひめこ》がいいました。
するとあまんじゃくが、こわい目《め》をして瓜子姫子《うりこひめこ》をにらめつけました。瓜子姫子《うりこひめこ》はこわくなって、しかたなしに裏《うら》の山までついて行きました。
裏《うら》の山へ行《い》くと、あまんじゃくはするすると柿《かき》の木によじ登《のぼ》って、真《ま》っ赤《か》になった柿《かき》を、おいしそうに取《と》っては食《た》べ、取《と》っては食《た》べしました。そして下《した》にいる瓜子姫子《うりこひめこ》には、種《たね》や、へたばかり投《な》げつけて、一つも落《お》としてはくれません。瓜子姫子《うりこひめこ》はうらやましくなって、
「わたしにも一つ下《くだ》さい。」
といいますと、あまんじゃくは、
「お前《まえ》も上《あ》がって、取《と》って食《た》べるがいい。」
といいながら、下へおりて来《き》て、こんどは代《か》わりに瓜子姫子《うりこひめこ》を木の上にのせました。のせるときに、
「そんな着物《きもの》を着《き》て登《のぼ》るとよごれるから。」
といって、自分《じぶん》の着物《きもの》ととりかえて着《き》かえさせました。
瓜子姫子《うりこひめこ》がやっと柿《かき》の木に登《のぼ》って柿《かき》を取《と》ろうとしますと、あまんじゃくは、どこから取《と》って来《き》たか、藤《ふじ》づるを持《も》って来《き》て、瓜子姫子《うりこひめこ》を柿《かき》の木にしばりつけてしまいました。そして自分《じぶん》は瓜子姫子《うりこひめこ》の着物《きもの》を着《き》て、瓜子姫子《うりこひめこ》に化《ば》けて、うちの中に入《はい》って、すました顔《かお》をして、またとんからりこ、とんからりこ、ぎいぎいばったん、機《はた》を織《お》っ
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