と、おばあさんはいいました。
 そこでおじいさんとおばあさんは、あわててお湯《ゆう》をわかして、赤《あか》ちゃんにお湯《ゆう》をつかわせて、温《あたたか》い着物《きもの》の中にくるんで、かわいがって育《そだ》てました。瓜《うり》の中から生《う》まれてきた子だからというので、瓜子姫子《うりこひめこ》という名前《なまえ》をつけました。
 瓜子姫子《うりこひめこ》は、いつまでもかわいらしい小《ちい》さな女の子でした。でも機《はた》を織《お》ることが大《だい》すきで、かわいらしい機《はた》をおじいさんにこしらえてもらって、毎日《まいにち》、毎日《まいにち》、とんからりこ、とんからりこ、ぎいぎいばったん、ぎいばったん、機《はた》を織《お》っていました。おじいさんはいつものとおり、山へしば刈《か》りに出《で》かけます。おばあさんは川へ洗濯《せんたく》に出《で》かけます。瓜子姫子《うりこひめこ》はあとに一人《ひとり》、おとなしくお留守番《るすばん》をして、あいかわらず、とんからりこ、とんからりこ、ぎいぎいばったん、機《はた》を織《お》っていました。
 おじいさんとおばあさんは、いつも出《で》がけに瓜子姫子《うりこひめこ》に向《む》かって、
「この山の上には、あまんじゃくというわるものが住《す》んでいる。留守《るす》にお前《まえ》をとりに来《く》るかも知《し》れないから、けっして戸《と》をあけてはいけないよ。」
 といって、しっかり戸《と》をしめて出て行きました。

     二

 するとある日のこと、瓜子姫子《うりこひめこ》が一人《ひとり》で、とんからりこ、とんからりこ、ぎいぎいばったん、機《はた》を織《お》っておりますと、とうとうあまんじゃくがやって来《き》ました。そしてやさしい猫《ねこ》なで声《ごえ》をつくって、
「もしもし、瓜子姫子《うりこひめこ》、この戸《と》をあけておくれな。二人《ふたり》で仲《なか》よく遊《あそ》ぼうよ。」
 といいました。
「いいえ、あけられません。」
 と、瓜子姫子《うりこひめこ》はいいました。
「瓜子姫子《うりこひめこ》、少《すこ》しでいいからあけておくれ、指《ゆび》の入《はい》るだけあけておくれ。」
「そんなら、それだけあけましょう。」
「もう少《すこ》しあけておくれ、瓜子姫子《うりこひめこ》。せめてこの手が入《はい》るだけ。」
「そんなら
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