そとあがっていました。
 浦島は何を見ても、おどろきあきれて、目ばかり見はっていました。そのうちだんだんぼうっとしてきて、お酒に酔《よ》った人のようになって、何もかもわすれてしまいました。


     三

 毎日おもしろい、めずらしいことが、それからそれとつづいて、あまりりゅう[#「りゅう」に傍点]宮がたのしいので、なんということもおもわずに、うかうかあそんでくらすうち、三年の月日がたちました。
 三年めの春になったとき、浦島はときどき、ひさしくわすれていたふるさとの夢《ゆめ》を見るようになりました。春の日のぽかぽかあたっている水《みず》の江《え》の浜べで、りょうしたちがげんきよく舟うたをうたいながら、網《あみ》をひいたり舟をこいだりしているところを、まざまざと夢に見るようになりました。浦島はいまさらのように、
「おとうさんや、おかあさんは、いまごろどうしておいでになるだろう」
と、こうおもい出すと、もう、いても立ってもいられなくなるような気がしました。なんでも早くうちへ帰りたいとばかりおもうようになりました。ですから、もうこのごろでは、歌をきいても、踊《おど》りを見ても、おもしろ
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