うが舞《ま》ったりしていました。
次に、南の戸をおあけになりました。そこは夏のけしきで、垣根《かきね》には白いう[#「う」に傍点]の花が咲いて、お庭の木の青葉《あおば》のなかでは、せみやひぐらし[#「ひぐらし」に傍点]がないていました。お池には赤と白のはすの花が咲いて、その葉の上には、水晶《すいしょう》の珠《たま》のように露《つゆ》がたまっていました。お池のふちには、きれいなさざ波《なみ》が立って、おしどり[#「おしどり」に傍点]やかも[#「かも」に傍点]がうかんでいました。
次に西の戸をおあけになりました。そこは秋のけしきで花壇《かだん》のなかには、黄ぎく、白《しら》ぎくが咲き乱れて、ぷんといいかおりを立てました。むこうを見ると、かっともえ立つようなもみじの林の奥《おく》に、白い霧《きり》がたちこめていて、しかのなく声がかなしくきこえました。
いちばんおしまいに、北の戸をおあけになりました。そこは冬のけしきで、野には散《ち》りのこった枯葉《かれは》の上に、霜《しも》がきらきら光っていました。山から谷にかけて、雪がまっ白に降り埋《うず》んだなかから、柴《しば》をたくけむりがほそぼ
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