がて、たい[#「たい」に傍点]をかしらに、かつお[#「かつお」に傍点]だの、ふぐ[#「ふぐ」に傍点]だの、えび[#「えび」に傍点]だの、たこ[#「たこ」に傍点]だの、大小いろいろのおさかなが、めずらしいごちそうを山とはこんできて、にぎやかなお酒盛《さかもり》がはじまりました。きれいな腰元《こしもと》たちは、歌をうたったり踊《おど》りをおどったりしました。浦島はただもう夢《ゆめ》のなかで夢を見ているようでした。
 ごちそうがすむと、浦島はまた乙姫さまの案内《あんない》で、御殿《ごてん》のなかをのこらず見せてもらいました。どのおへやも、どのおへやも、めずらしい宝石でかざり立ててありますからそのうつくしさは、とても口やことばではいえないくらいでした。ひととおり見てしまうと、乙姫《おとひめ》さまは、
「こんどは四季のけしきをお目にかけましょう」
といって、まず、東の戸をおあけになりました。そこは春のけしきで、いちめん、ぼうっとかすんだなかに、さくらの花が、うつくしい絵のように咲き乱《みだ》れていました。青青《あおあお》としたやなぎの枝《えだ》が風になびいて、そのなかで小鳥がないたり、ちょうちょ
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