ない》しました。たい[#「たい」に傍点]や、ひらめ[#「ひらめ」に傍点]やかれい[#「かれい」に傍点]や、いろいろのおさかなが、ものめずらしそうな目で見ているなかをとおって、はいって行きますと、乙姫《おとひめ》さまがおおぜいの腰元《こしもと》をつれて、お迎《むか》えに出てきました。やがて乙姫《おとひめ》さまについて、浦島はずんずん奥《おく》へとおって行きました。めのう[#「めのう」に傍点]の天井《てんじょう》にさんご[#「さんご」に傍点]の柱、廊下《ろうか》にはるり[#「るり」に傍点]がしきつめてありました。こわごわその上をあるいて行きますと、どこからともなくいいにおいがして、たのしい楽《がく》の音《ね》がきこえてきました。
 やがて、水晶《すいしょう》の壁《かべ》に、いろいろの宝石《ほうせき》をちりばめた大広間《おおひろま》にとおりますと、
「浦島さん、ようこそおいでくださいました。先日はかめのいのちをお助《たす》けくださいまして、まことにありがとうございます。なんにもおもてなしはございませんが、どうぞゆっくりおあそびくださいまし」
と、乙姫さまはいって、ていねいにおじぎしました。や
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